くぼゆうじの雑談

日々の備考録

銃と米国社会ートランプ大統領はなぜ誕生したのかー

先日、ラスベガスで史上最大となる銃乱射事件がおこり多くの命が失われた。日本でも衝撃的なNEWSとして流されたので覚えている方も多いだろう。今回はこの事件そのものにせまるジャーナリスティックなものではなく、米国の身近に銃がある環境と銃の事件がおこる社会構造にせまってみたい。

まずは実態把握としてCNNのまとめた数字でみる米国の銃事件を参考までにリンクしておく。

www.cnn.co.jp

①歴史

まず、合衆国の成り立ちとして国民統合の柱である合衆国憲法が1776年に制定され、その13年後には修正事項として、国民(民兵)が自由を守るために武装する権利をみとめる2項が加えられた。詳細な歴史的経緯は本エントリでは追わないが、ここからわかることは、「アメリカの理念や正義は憲法であり、そして自由であり、その自由を行使するために必要なのが銃である」と言っても差支えないだろう。

産業構造の変化

世界をリードする米国企業はその殆どがIT企業や金融の領域である。しかし、かつて米国が繁栄を誇った、1920年代~30年代やWW2後も製造業が中心であった。特に大戦後は自動車産業がシカゴやデトロイトなど南部の州で活発であった。しかし、2000年代以降はより急激に大規模なフランチャイズ化が進み小売りや店舗は吸収されるか消滅していった。また、自動車産業も国際競争の中、生き残れず多くの失業者を出す結果となった。失業者の多くは移民や黒人であったが、昨今のグローバル化に伴い、貧しい白人も増えている。つまり、産業構造の転換に伴い、多くの貧しいマイノリティを生み、又、グローバルな競争の加速化と構造の転換のさらなる押上げにより貧しい白人をも生み出している。

(日本人観光客など筆者たちが知っているNYやLAなどは上手くいったほんの一部の都市に過ぎない、デトロイトなどはすでに廃墟となっているところが多い)

米国というのは不思議な国で超先進国な顔と開発途上国のような顔を併せもつ国なのである。

現代アメリカ人の心理構造
①②から「米国にとって銃とはなにか」また「どういう社会構造か」速足ではあるが説明してきた。かつてS.ハンチントンが「分断されるアメリカ」という本を書いたが、オバマ政権時から事態はより深刻になっており、すでに筆者は「細分化された米国」だと認識している。かつての南部で保守で共和党、北部でリベラルで民主党という枠組みだけでは把握しきれない事項が多いのではないだろうか。ここにもうひとつキリスト教原理主義か否かという軸が入る。つまり単純にマトリックスが2倍になったのである。また、富めるもの、貧しいものの軸も指標に加わる(より細分化が進む)。例えば、白人だが貧しくキリスト教原理主義であるといった層と白人の富めるがキリスト教原理主義者が抱える人種・民族・宗教・生活的不満がトランプを後押ししたのであろう。富める白人層であっても、社会的連帯が失われていくなか、みな孤独で承認や関係性を欲している。また、今後、米国は人種構成が大きく変わる。白人が減っていくのである。当然、彼らはプライドを維持できない恐怖を常にかかえている。

最後に

米国政治にしても社会にしても、自由の共和党と平等の民主党がせめぎ合うことで合衆国は拡張し成長してきた。①銃とは米国の正義であり、②身近に購入できる環境があり③生活面の不満や孤独感、人種・宗教的な対立といった複合的要素があいまって、トリガーがひかれる。今後もこの傾向は続くと思うが、米国は弾力のある社会である。本当の意味で差異を認め合い共存できる社会になってもらいたい。