くぼゆうじの雑談

日々の備考録

トランプの東アジア歴訪ー日韓中を中心にー

米国のトランプ大統領が東アジアを外遊中である。すでに、日本、韓国、中国という主要国は歴訪済である。前提として、この東アジア外遊前のトランプ大統領は米国議会で、ロシアとの関係や通商問題(貿易赤字)に関して散々突っ込みを入れられており、この外遊で何が何でもお土産を持って帰らなければという意気込みが強かったのだろう。なので、今回の外遊の目的は3つ、1、北朝鮮問題 2、通商問題、3、世界的に評判やイメージの悪さの払拭である。

訪日ではさすがにリラックスした様子で、ゴルフ外交などとと揶揄されているが、評価自体は短期的には合格点である。まず、北朝鮮問題では拉致被害者家族とも面談というパフォーマンスの他、今上天皇にも会い、北朝鮮に対して日米の連携強化や日米同盟の強さを示すことが出来た。また、成功をアピールするように会談で軍備品を日本に売ることまで公表し、安倍総理も防衛力の強化のもとに軍拡路線をとることを示した。ただあまりメディアでは報じられていないが、貿易関連においてはFTAも視野に入れて今後なお一層、対話と交渉を続けるというところまでしか進展できなかった。軍事以上に経済問題はやはりシビアで厳しい。それでも総合的にみれば、この度の日米会談は成功であろう。貿易課題は中長期的な問題となり今後の日米関係のリスクとして残る形にはなった。

 

訪韓では訪日の成功を受けて、ソリが合わない文大統領側にも成功させないといけないという配慮と米国側でも北朝鮮問題に対する理解やスタンスの一致をみなければいけないという両国ともに配慮と遠慮がみられた。数十年ぶりに韓国議会で演説し、米韓同盟の重要性を説くとともに、慰安婦とされる女性とも面会し、米韓ともにお互いの目的を果たそうと努力を重ねた点は見受けられる。ただやはり、北朝鮮問題にしても、韓国との通商問題にして、一見成功に見えるがまだまだお互いが見解をともにしたとは言えず、そもそも宥和路線をとる文大統領が今後どういうスタンスをとるかは未知数である。

 

訪中においては国賓以上の待遇で迎えられ、トランプ大統領にとっても北朝鮮問題や対貿易赤字の半分をしめる中国との会談はこの外遊の一番の肝であり、試練であった。

今回は両国ともに敵対的なスタンスではなく、大人の対応として世界に対して両国間の友好と偉大さをアピールすることに徹したのだろう。その理由として、両国ともに抱えている様々な懸念される材料には口をつぐみ、非難は全くなかった。トランプ大統領は一応の北朝鮮問題での中国の協力とわずかばかりであるが1兆円規模の取引きをなんとか手にいれたいうあたりである。米中関係で言えば、後退はしなかったがさして前進もしなかったというが本質であろう。今後より一層の権力や権限を掌握しようとする周国家主席と体裁上は成功したように見せないといけないトランプ大統領の利害が一致した側面だけはなんとか保たれた。

 

この日韓中の外遊に関して、総合的にみると非常に一貫性のない中長期的にはリスクが高い外遊となったというのが筆者の見解である。相手によって外交姿勢を変えるのは当たり前のことであり、そのことに何か異論をつけるのは全くもって論外なのであるが、トランプ大統領は目先の利益や課題にあまりに注力し、それぞれの国での外遊姿勢が、この東アジアの主要国である日本、韓国、中国の3か国がお互いに受け入れて理解できるものにはなっていない。例えば日本からすれば、米国が慰安婦を迎合する姿勢は受け入れられないし、仮想敵国である中国に尖閣や人権蹂躙などで非難のひとつもないのも受け入れられない。米国からすれば各国でそれなりに上手くまとめれたので自国の利益になるだろうと考えているかもしれないが、こうした一貫性なき矛盾した外交は、後々、米国に厳しい判断を迫り決して利益にはならない。

今回のトランプ大統領の「八方美人」外交は、失敗である。悲観的な見方だが、北朝鮮問題でも通商(貿易赤字)問題でも、最終的にはあちらを立てればこちらが立たずになることは目にみえている。