くぼゆうじの雑談

日々の備考録

国政と安全保障 -解散総選挙への道2-

日々めまぐるしく選挙に向けて各党入り混じっての展開がおこっている。良いものもあれば悪いものもある。小池新党こと「希望の党」が予想通り大苦戦である。維新の説得には失敗に終わり、民進党改憲や安保政策を巡って左派を排除するといってしまう女王様ぶり。前原代表も党内まとめきれず、盟友の枝野さんが筋を通して「立憲民主党」を立ち上げる始末。そもそも、前原さんは人気や知名度のある小池さんと組みたく、支援団体や徒党を組めない小池さんは前原さん(民進党)と組みたく両者の利害は一致していた。上記のように、それぞれの取り返しのつかないミスによって急激に力というか求心力を失いつつある。

さらに、小池代表を影で支えてきた男・音喜多氏の離党である。また、民進党の支援団体である連合は、すでに東京では立憲民主党を支援する旨を発表している。連合が簡単に希望の党や協力者である前原グループを支持、支援するとは思えない。旧民主党の時代から市民のための党であるからこそ支援してきたのだ。ここにきて政権交代は必要ではあるが、そのためには手段を選ばずの前原グループや権力欲むき出しの希望の党を支援する理由がない。

10月5日付けの読売新聞朝刊に記載された細谷雄一教授の「視座」の論稿である内容が(ちと)ひどい。細谷先生といえば北岡先生のお弟子さんの御一人であり、現在、政府系の仕事も任される、名実ともに立派な先生であるし、筆者も好きな国際政治学者の方である。ただこの論考の中身は愕然としてしまうほど中身がない。以下、ポイントをまとめる。

【安保 政権の評価を問う】

1、対北朝鮮に関しては日米同盟の「巻き込まれ」「見捨てられ」恐怖が当てはまらない。

2.北朝鮮は米国以上に日本を敵視している。

3.今回の選挙のために「踏み絵」(憲法改正、安保政策をめぐって)は、短期的にイメージはマイナスになるが、中長期には意見集約が容易でプラスではないか。

 以下、1.2.3.について反論をしていきたい。

まず、

1についてだが、戦後日本の安全保障の基軸は日米同盟であり、これまでの北朝鮮危機に関しても、日米の枠組みを重要ししてきたししている。何故、今回はあてはまらないのだろうか。日本の安全保障の根幹を揺るがしかねない。

2についてだが、敵視していると感じるのは自由だし、確かに距離的、歴史的問題から米国よりも日本の方が脅威認識は高い。だが、これは日本の認識であって、北朝鮮の感情や認識ではない。イラクやシリアを米国が潰してきたのをみて、対米国からの攻撃を防ぎ=生存のために行っている行動である。北朝鮮の教育では日本は憎む国であるが、常にもっとも憎みライバルとしているのは米帝こと米国である。間違えとまではいえないが、正確ではない。

3については、中長期的な視野は素晴らしいし的を得ている。しかし、目の前の選挙に勝って政権政党になることが先決である。そのあと意見集約をするのがリーダーの役割であり政治であると思う。

細谷先生、お読みになられたらコメント待っています。

 

日本よ反撃能力を持て!

8月にJアラートがなり日本の上空(領空ではない)を北朝鮮のミサイルが通過した。まだ記憶に新しいが、筆者も含めて多くの人がどうすればよいのかわからなかった。日米同盟というとき、米国が攻撃、日本が防御という役割が簡単に想起できる。ただ安全保障というのは常に最悪の事態を想定して準備しておかなければならない。そう、映画「シン・ゴジラ」のように、今の日本が最も直面したくない現実をである。

10月2日付けの読売新聞朝刊に北岡伸一先生の論考が掲載された。こちらを下敷きにしながら私なりの見解を述べていこう。

まず、北岡先生の主張を簡単にまとめると以下のようになる。
敵から攻撃された時(これは国際法上、実際に攻撃があった場合と急迫不正の攻撃に対してもである)に限り、日米の親密な協議に基づき通常兵器で反撃する能力くらいは持つべきである。
理由として、

1.ミサイル防衛だけでは全ての防御ができない(ミサイルを撃ち落とせない)
2.日本の領海・領土に北朝鮮のミサイルが落ち犠牲者が出なければ米軍は攻撃しない

3.少数の犠牲者が出ても、米軍は大規模な反撃はしない。

結論として、米国と親密な関係を築き信用しているが自国の防衛を米国にここまで依存してよいのか、又、現在の日米関係において米国に攻撃・反撃を要請するだけの発言権は日本には事実上ない。

 

筆者も概ねこの北岡論考に賛成である。最大の防御は抑止力である。つまり相手に攻撃させないことだ。そのためにも日本には攻撃意志があり、そのための法的・制度的枠組みがあり、実際に実行できると相手に思わせなければならない。
守るために鉾を持つのである。これは専守防衛と全く矛盾しない。

実は日本は憲法解釈上、攻撃能力を有する軍備がない。(ことになっている)
必要ないという人もいても構わない。
対話と圧力の外交も大切である。

しかし、北朝鮮が対話したい相手は米国であり現状の日本が外交で何か事態を変化させることはほぼ出来ない。自国を防衛しかつこの東アジアのパワーゲームから置き去りにならないためには、米国と協議しつつ反撃能力を持つことが必要である。

北朝鮮危機を契機に米国との核シェアリングを進めても良い。中長期的な戦略として、対象国は中国、ロシアとの軍事バランスであり均衡である。

上記の内容はもちろん、ロシア、中国、北朝鮮、韓国、そして日本について、宣伝で恐縮だが、リサーチを行いラジオDJバロン西田さんとの対談で4時間かなり深くお話させて頂いた。○○ながらで構わないので聞いて頂けると光栄である。

baron.booth.pm

最後にクラウセヴィッツの言葉を筆者なりにアレンジすれば、

「守るために攻めよ」である。つまり、絶対に防衛のためだけの戦争はない。

ロシア外交の憂鬱?

北朝鮮危機を語る上で外せない国がある。それはロシアである。これまでの対北朝鮮への国連への制裁に関しても、甘い(北朝鮮より)発言を続けてきた。ロシアは日本の味方なのかそれとも敵なのか判断しかねる。

今、北東アジアの情勢はかつての6カ国協議の枠組みから東南アジアまでも含んで、南シナ海、さらには太平洋まで覇権争いの幅が広がってきた。主要なプレイヤーは、米中露の3カ国である。日本はもうすでにこのパワーゲームにはいない。

Russian Far East - Wikipedia

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上記を前提として、ロシア外交が対北朝鮮危機に対して、どうしてこうも煮え切らない態度なのか筆者なりの考えを述べる。以下、自分のフェイスブックからの引用

ロシアの北朝鮮危機に対するスタンスとして、大きく二つの側面から考えております。1、ロシア経済(露欧米関係) と 2、ロシアの地政的軍事戦略の二つです。
①に関しては、ロシアに対する欧米などの経済制裁に効果があったかどうかは別としても、ロシア経済自体が失速の傾向にあり、また欧米とのエネルギーも含めた貿易関係も悪化していると捉えております。結果、ロシアとしてはこの度の北朝鮮危機に対して特に米国に協力する形での関係の修復と経済成長
率のUPを考えているだろうという点が1点。
②地政的な軍事戦略として、ウラジオストクを中心とした北方においては日本や米国と軍事バランスをとり、あわよくばこの海域をコントロールしたい点。さらに、北朝鮮の地域を緩衝地帯にしておきたく、サード配備の反対や仮に北朝鮮有事後かの地域が米韓の前線になることは避けたいという点。つまりこの2点からロシアの安全保障上、北朝鮮が米国と敵対しているとしても、この地域にバッファーとして存在してくれればいいという点です。
①②は矛盾します。経済的には少なからず米国と円満な関係を構築したいと考える一方で軍事的には米国とバランスをとる事を優先し、脅威リスクを少しでも避けたい(北朝鮮を緩衝地帯にしたい)思惑が綱引きをしており(これを絡み合うと表現しました)、結果、現状維持、静観のスタンスにいるのではないかと捉えております。

つまり政治=経済と軍事のバランス と考えるならこの矛盾する2つを上手くコントロールし伸ばしていくかということを戦略的にロシアは考えての外交である。
結論はロシアは敵でも味方でもなく、自国の国益の最大化を図っているだけなのである。
10月3日追記

東京財団の研究員でもある畔蒜泰助さんより、質問をいただいた。大変光栄である。
より、詳細かつ具体的な論考は下記を参照していただきたい。

tkplus.jp